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山形県鶴岡市

庄内刺し子

「庄内刺し子」は、津軽の「こぎん刺し」南部の「菱刺し」とならぶ、日本三大刺子の一つです。
藍染の木綿布に白い木綿糸で刺しこまれる緻密な紋様は、作業着を補強し保温性を高め、
豊作、魔よけ、商売繁盛といった、人々の願いや祈りを込めた記号的な装飾となっていきました。

古布をつなぎ、刺し重ねる模様

「米刺し」「花つなぎ」「紫陽花刺し」「杉刺し」など、庄内刺し子の基礎刺しは約40種類程。ハギレをつなぎ合わせた布に、水平、垂直に刺し、最後に斜めに横切って模様がつくられます。

「刺し勇」の小野寺勇一さんを訪ねて山形県鶴岡市へ。小野寺さんが庄内刺し子と出会ったのは30代半ば。今に活きる刺し子をテーマに、身近なアイテムに刺し子をとりいれた製品をつくられています。

― どんな刺し子製品をつくられていますか?

主に小物ですね。大きいものは数も作れないし、つくるのに時間がかかって値段も高くなってしまう。小物であれば数百円で買えるものもつくれるので、今まで刺し子に興味がなかった方に、手に取って身につけて頂けるものをつくりたいと思っています。

― 男性で刺し子の方って珍しいですよね

「これ、お兄さんが作ったの?」って、お客さんがびっくりされたりはしますね。僕は幼い頃から針仕事が好きで、好きなバンドのロゴを服に刺繍したり、自分で服の丈を詰めたりしていたので、違和感はありません。男性目線で物をつくることで、例えば女性が彼氏や旦那さんにプレゼントしたり、そういう風に庄内刺し子が選ばれてもいいのかなと思いながらつくっています。

― 庄内の冬をどう感じていらっしゃいますか?

昔ほどではないけど、庄内の冬は雪に閉ざされてしまい、春が待ち遠しいという思いが強いんです。雪の日の晴れ間は貴重でとても奇麗なんですよね。そんな時に遠くの山を見ればモノトーンの景色がドーンと目に入ってきて、刺し子の紺と白とも重なります。日本人の好きな原風景と、刺し子はマッチするんじゃないかなと。昔の方々はきっと、冬に次のシーズンの野良着の繕いをしていたんだと思います。これは想像ですけども春の花を思って花の模様を刺したり、遠くの杉山を見て「杉刺し」を刺したり、見た自然を刺して表現したのではないかと、刺す度に凄いなと感じています。

― こぎん刺しとの違いを教えていただけますか?

庄内刺し子はとても細かい針目が特徴の刺し子です。こぎん刺しよりもきっちり目の詰まった綿の生地に刺していきます。5ミリの方眼の基本的な下絵を使って同じ刺し模様を刺しても、その刺し手の刺しが、あらわれやすいと思いますね。庄内刺し子では刺し終わった後に、布と糸を馴染ませるようなしごく作業も重要です。そうしないと縫い詰まりといって、布が小さくなっていく。刺している時間よりもしごいてる時間のほうが長かったりします。

― どんな道具を使って刺すのですか?

特別な道具は特にないんです。布と糸とハサミと針と。何枚も目の詰まってる布を刺していくので、刺し子用の針は、折れにくい先の尖ってる針を使いますね。

― ミシンでは刺せないのでしょうか?

今は刺し子模様が縫えるミシンもあるんだけど、手の温もりには敵わないのかなと。ミシンだとどうしても、使える糸の太さが決まってくる。手刺しであれば糸で強弱をつけることができるので、より風合いは出るかもしれないですね。

― 刺し子を刺しながら考えることは何ですか?

模様を均一に刺そうと意識しながらも、刺しながら色々と考えます。例えば「衣食住」という言葉があるけれども、何故「衣」が先なのか。食住衣でも住食衣でもいいわけじゃないですか。でもやっぱり、衣を纏うことで人になれると思うんです。衣類を構成する最小単位に布と糸があり、その力を最大限に発揮できる方法が、刺し子だと思うんです。刺し子にはやはりそういったパワーが秘められてるんじゃないかなと感じています。

― 庄内刺し子が日本に続いて来た理由は何だと感じますか?

かわいさもあるでしょうし、庄内の方々の勤勉さでしょうか。針仕事なので、実際には大変なんですよ。苦痛を伴うこともあれば、長くやって体に負担がかかるようなこともある。それでもやっぱり庄内に生まれ育ったDNAが、刺し子を愛でる力っていうものを育んでいる。庄内という土地が、庄内刺し子を残してきたんじゃないかなと思います。

小野寺勇一(おのでらゆういち)

1974年生まれ。山形県在住。30代半ばに庄内刺し子と出会い、佐藤恵美に師事。小物を中心に刺し子製品を制作している。2008年より日本各地のクラフトイベントに参加。

http://ameblo.jp/consumelesscreatemore/
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